第13話 タマ子の思いと寛容な父

 夕食の時間。大テーブルにベリー家の家族が揃っていた。

 コックが豪華な食事を作り執事や侍女達が運び給仕する。


「タマ子、今日の城外見学はどうだったかな?」


 食事中、国王のルーカスが尋ねた。


「はい、とても新鮮で楽しかったです」


「いいな~僕も早く行きたいです」


 そう言ったのは弟のセオだった。


「すぐに行けるようになりますよ」


 優しくセオに語りかける母のデイジー。


「お父様、分からないことがあります」


「なんだね、タマ子」


「どうして国民は10歳になると勉強もせず働くのですか?」


「そういうきまりだからだよ」


「お父様が決めたのですか?」


「いや、昔の国王が決めたんだよ」


「私……」


「どうした?なんでも言ってごらん」


「間違っていると思います。子どもは働くよりも、勉強しないといけないと思います。それと……」


「それと?」


「貴族と国民に隔たりがあってはいけない!絶対にいけない…」


「なるほど…何かあったのだね」


「馬の世話をするノアという10歳の男の子に出会いました。私はぜひお友達になりたいのです」


「どうしてかな?」


「はい、私にお友達がいないからです。それと国民の子どもの生活や考え方を知りたいからです。ノアだけじゃない。色んな人とお友達になりたいのです」


「ようくわかった。タマ子、貴方はいずれ私の後を継ぎ国を収める人になる。今言った事はゆくゆく大きな力になるだろう。貴方の抱いた疑問や要望はやがてエスポワールの未来に直結する大切な事だ。タマ子、あなたの思うようにやってみなさい」


 国王ルーカスはとても頭が良く寛容だった。そして先見の明もあった。

 タマ子は安堵したように微笑んだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る