第6話 暴力

 母親佐和子はタマ子に洗濯を頼み、姉八重子と出かけて行った。

 この時代の洗濯機はもちろん全自動ではない。四角い箱はほとんどが洗濯槽。洗う時間をダイヤルで回す。横に付いている脱水機、ゴムのローラーが2つ付いてるだけの物だ。真ん中に洗濯物を1枚ずつ入れハンドルを回すとローラーが回り絞るというものだった。

 下着などは薄くていいが、バスタオルなどはタマ子のチカラではハンドルが回らなくなる。偏らないように何度もやり直し洗濯を終えた。


 夕方になり洗濯物を畳んでいると父親一男が仕事から帰って来た。


「お前1人か?!飯は?」


「わからん」


 タマ子に夕飯の支度はまだ無理だ。

 一男は仕事終わり晩酌をするのが楽しみだった。

 タマ子は気をきかせてお風呂を入れておいた。


「お父ちゃんお風呂入ってきたら?」


 一男は黙ってお風呂に入った。

 だが出てきてまだ佐和子達が帰ってないことに腹をたてた。


「働いて来て飯なしか!」


 傍にいたタマ子を殴りだした。八つ当たりだ。

 タマ子の小さい身体はコロコロと転がる。泣き出すと「泣くな!うるさい!」とまた殴られ蹴られ…それが1時間程続いた頃、ようやく佐和子達が帰って来た。


「アンタ何してんのよ?!」


「こんなに遅くまでお前こそ-」


 今度は夫婦喧嘩が始まった。

 タマ子はおもらしした為、泣きじゃくりながらお風呂に入った。


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