第16話 ハリー

「タマ子王女様、今日は戦士の訓練所へ行きます。危険な場所ですので、どうか慎重に行動していただきたい」


 2人は少し離れた場所にある訓練所にやって来た。

 剣を交じ合わせる音が盛んに響き渡る。2人が遠目から見ていると、初老のグレタ隊長がゆっくりと近付いて来た。


「グレタ隊長、お久しぶりでございます」


 先にアンドレアが挨拶を交わす。グレタ隊長はタマ子王女を見ると嬉しそうに微笑んだ。


「タマ子王女様、初めまして。私はグレタと申しまして、コントラタック隊の隊長をしております」


「激しい訓練は大変ではないの?」


「私のご心配ありがとうございます。見ての通り老体ですので、今は15歳になるハリーに任せております。ハリー!」


 振り返りハリーという名の人を呼ぶと、剣を置き1人の若者が走って来た。

 彼はブルーのサラサラした髪を靡かせ、顔は整っていた。


「タマ子王女様ですか!お会い出来て光栄です!」


 立ち止まり笑顔でハリーは言った。


「走っても息が切れてませんね」


「はい!日頃訓練をしておりますので大丈夫ですよ」


 ハキハキと話すハリーは15歳には見えない位大人びていて落ち着きもあった。


「ハリーさんは1番強いのですか?」


「今の所は!」


 そう言うと少しはにかんだ。


「バリアの心配をしておりましたが、神の申し子タマ子王女様が生まれバリアも強固になりました。ありがとうございます」


 今度はグレタ隊長がそう言って頭を下げた。


「いえ、私は何もしていないわ。神の申し子というのも本当は分からないの」


「そうですよね!でもタマ子王女と共に神のトキノ様が降臨されたのは事実」


 ハリーはそう言って本当に嬉しそうに笑った。


「ハリーさん、私はまだ小さいですがお友達になって頂けると嬉しいです。それと、私も訓練をしたいです」


 3人は驚き皆、顔を見合わせた。


「タマ子王女様、それはどうでしょうかな…国王様にお尋ね頂かないといけない内容でございます。まぁ、難しいとは思いますよ…?」


 アンドレアはタマ子王女を説き伏せるようにそう言った。


「ならハリーさん、友達は?」


「タマ子王女様が宜しければ大歓迎ですよ」


「ありがとう!」


 タマ子は戦いたい訳ではなく、力になりたいと幼いながらも思っているようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る