第41話 あと1つの約束

 教会にやって来たタマ子は大声で叫んだ。


「トキノ神様!いますか!」


「タマ子。私は常にいますよ」


「トキノ様、どうして…どうしてセオが死ななくてはいけないの…?どうして守ってくださらなかったの…」


 最後は涙声になっていた。


「タマ子。人間には運命があるのです。セオはその運命に従ったまで」


「運命だなんて…そんな酷すぎる……私は神様を恨みます…」


「タマ子。貴方の強さを覚えていますか?何があってもしっかりと前を向く事。そうして生きて来たのです。全てを受け入れ前に力強く進む。貴方の前世がそうだったのです」


「私の前世…?」


「今ここに呼び覚ましましょう」


「うっ!頭が痛い…何をされたのです……」


「どうですか。思いだしたでしょう」


「お父ちゃん、お母ちゃん…あ、猫はどうなったのですか?」


「貴方の手によって救われましたよ」


「そう…良かった」


「天界での事も思いだしたでしょう?」


「はい、私は…来世を喜んで受け入れました」


「貴方が前世で亡くなってしまったのも運命。そしてセオも今は天界でにこやかに受け入れ、来世を楽しみにしていますよ」


「そう…なら、良かった」


 そこに後を追って来たハリーがタマ子の後ろで様子を伺った。


「天界での事も思い出しましたか?子どもの神シルエルが約束した事…」


「約束…?」


「貴方に3つの願いを叶える。タマ子という名前。そして可愛い容姿」


「あ、思い出しました!あの時は訳が分からなくて…」


「では15歳になったタマ子に再度問います。あと1つの願いは?」


「じゃあ、2度とセオと同じ人が出ないように、戦いをする戦士達の助けになりたいです!この先何があるか分からない。また誰かが…そんな事耐えられません!」


「分かりました。人を生き返す事は無理ですが、治癒ならタマ子にできるでしょう」


「治癒…」


「はい、怪我を治す、病気を治すなどあらゆる面で回復出来る力。タマ子、いかがですか」


「はい!欲しいです!戦士と共に闘う事は出来ないけど、私は皆を治癒の力で守ります!」


「タマ子…タマ子を戦場になんか連れて行けない……」


 後ろに居たハリーが隣に来て声をかけた。


「そうですね。危険な行為ではあります。でも私も先の闘いで敗れた神と同じく共に闘います」


「トキノ様!有難いお言葉をありがとうございます!」


 ハリーは歓喜した。


「じゃあハリー、私も連れて行ってくれるよね?」


「タマ子、約束は後1つのみ。貴方には愛する人と生涯幸せに暮らすという選択も出来るのですよ」


「愛する人と…生涯……」


 タマ子は悲しげにハリーを見た。


「いいえ、自分だけが幸せになりたいとは思いません!お願い!私に治癒の力を!」


「分かりました。それがタマ子らしさかも知れませんね」


 そうトキノが言うとタマ子の前に煌びやかな杖が現れた。タマ子は急いでその杖を手にした。


「治癒の力と唱えその杖を振りなさい。あなたの望む事が起きるでしょう」


「あぁ、ありがとうございます」


 タマ子は杖を両手にしっかりと握りしめ頭を下げた。

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