29 イチャイチャすんな

「パンダさんはうるさいから、そこにいなさ〜い」


「つれてけ!」


 夏生はリビングに入り、ソファーに莉子本体をおろした。「や〜よ〜。そんな小さい手足じゃ、こっちまで来られないでしょうね〜。ホーッホッホッ」


「悪役っぽい笑い方ですねー」


「演劇部の時、魔女の役とか女装した悪役ばっかりやってたの〜」


「ピッタリですね。似合いますよー」


「今はカエルさん抱っこした魔女かしら〜」椅子に座り、莉子ガエルを膝にのせる。



 春樹パンダは床をふんッと叩く。「くぅ……お姫様抱っこくらい、元の体に戻れればできたのにっ。くやしい!」



キャッキャッ


リビングから莉子ガエルと夏生の声が聞こえる。廊下とリビングをさえぎるドアは半分開いてる。


「キャッキャッ、夏生さん、お腹触んないでくださいよー」


「だって手触りいいんだも〜ん」



「はうッ! 夏生め、莉子とイチャイチャしやがって! ちくしょう!」




「キャッキャッ。もー、夏生さん。つんつんしないでー。くすぐったーい」


「だってカエルさんかわいいんだも〜ん」

夏生が莉子ガエルを抱っこしながら指でお腹をつんつんしてる。



春樹パンダは起き上がりたい。


「がんばれ、俺。莉子を助けるんだ」


春樹パンダは、なんとか力を入れて立ち上がった。


「よし、歩くぞ。……わあっ」


ぽて


春樹パンダは倒れた。


「だめだ……。こんな小さい手足じゃ歩けない。リュックも邪魔だし……」




「え〜い。コチョコチョコ」


「キャッキャッ、くすぐったーい」


パタパタパタパタパタパタパタパタ


「あら〜? 何の音?」


「イチャイチャすんなーーー!」


ドアの隙間から春樹パンダがリュックを引きずりながら、ほふく前進してるのが見える。


「春樹!」「あらパンダさん」


パタパタパタパタパタパタパタパタ


「莉子を離せーーーー!」


「うっさいわね」


バンッ「イテッ」


春樹パンダはドアにはさまれた。


「ぐうぅ、くるしい……」お腹のところで挟まっている。


「夏生さん! 何するんですか!」莉子ガエルは夏生をペペペンと叩いた。


「あら、ごめんなさ〜い。入って来れないように閉めたんだけど、パンダさんの動きが思ってたより速かったみた〜い」


「春樹ぃ、春樹ぃ! 大丈夫?」


「………た す け て」






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