31 スーーーーーーーーッ
「ウキャキャッ、夏生さんやめてー」くすぐったがる莉子ガエル。
「やめろー、セクハラだー!」
「こんなんでホントに戻るのかしらね〜」
「キャハッ。な、夏生さん、窓開けてください!」
「え〜、ど〜して〜?」
「空気の入れ換えをした方がいいと思うんですっ」
「あら、な〜に〜。おならでもしたの〜?」夏生は立ち上がって窓を開けた。
「スーーーーーーーーーーーッ」
「あら、すかしっぺ? お腹に溜まってたのね〜」
「火事だぁーーー! たすけてぇーーー!」莉子ガエルが叫んだ。
「ええ〜っ、ちょっとやめてよ〜っ」慌てふためく夏生。
「莉子、ピンチの時は火事って叫べって俺が教えたのを覚えてたのか。よし、俺も。スーーーッ(息を吸う音)火事だぁーーー!」春樹パンダも叫んだ。
「ちょっとコラコラっ」莉子ガエルと春樹パンダの口をふさぐ夏生。「静かにしないとその口を縫いつけるわよっ」
「モゴモゴッ。
ピンポーン
「あら〜、ご近所さんかしら。火事じゃないですって言わないと」春樹パンダをポイッと投げた。
「グエッ」頭から床に落ちた春樹パンダ。
「春樹ぃー! 夏生さん、私のパンダさんなんですっ。投げないでくださいっ」
「ハイハイ、ごめんね〜」
ピンポーン
ガチャッ。ドアを開ける夏生。
「火事なのっ? 大丈夫っ?」隣りのおばさんだ。
「ごめんなさ〜い。違うんです〜! 喋るぬいぐるみ買ったんですけど〜、音量間違えちゃって〜。すみませ〜ん」
「あら、そーなの? ぬいぐるみとしゃべってるの? さみしいわね、たまには遊びにきてよ。夏生君、相変わらず綺麗ねー」
「ありがと〜ございま〜す」
隣りのおばさんは帰った。
「夏生さんの女装ってご近所さんは知ってるんですね」
「そうなの、有名よ。莉子ちゃん、もう火事だとか言わないでね〜。消防車呼ばれたらどうすんの」
「だってえ……。くすぐられるのつらかったんです……」しょげる莉子ガエル。
ガッガッガッ
「あらっ、何の音かしら?」
ガッガッガッ
キィー
夏生の部屋のドアが開いた。
赤と黒のレースの下着を付けて、カエルの頭をしたマネキンが歩いてきた。
「「ギャーーーーーーーー!」」夏生と莉子ガエルは絶叫した。
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