好きな子のパンダになっちゃった

ながくらさゆき

1 生まれ変わるならなりたい?


莉子りこは生まれ変わるなら何になりたい?」


「ゲームのキャラになりたい」


「……ええ?」


莉子は高校の帰りに、同じクラスの男子・春樹に誘われてファミレスに来ていた。


急にどうしたんだろう、何か悩みでもあるのかなと思っていたが、春樹は世間話ばかりして、席に着いてからもう一時間が経過していた。


「アニメのキャラでもいいよ。小説のキャラでも」


「……それってさあ、幸せなの? 自分の意志で動けないじゃん」


「そんな変なものを見る目で見ないでよ!

流行ってるの。自分のプレーしてた乙女ゲームの世界に転生して、そこで恋をして幸せになる小説とか」


「そうなんだ……。ネコとかウサギになりたいとか、生まれ変わってもまた私になりたいとか言うもんだと思ってたから。そんなに今の生活が嫌なの?」


「そうじゃなくて、ただ流行ってるから! 毎日そういうweb小説読んでるから! もう帰っていい? 帰るね!」


そう言って莉子は残りの紅茶を飲み干して、パンダ柄のハンカチで口を拭いた。パンダ柄の財布から、紅茶の代金をテーブルに置いて走って店を出た。


「えっ。ちょっと待って! 莉子!」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る