2 踏切を渡りたい
莉子はファミレスを出た。小雨がふっていた。このファミレスから莉子の家まで徒歩10分。走れば5分ほどで着くだろう。
「うぎゃあ、雨降ってる」
踏切を渡ろうとしたらカンカンカンカンと音が鳴って「踏切の外に出て下さい」と女性の声でアナウンスがした。そして遮断機が降りてきた。
「うう、どうしてこの踏切は地下通路が無いの。濡れちゃうじゃん」リュックの中からパンダ柄のタオルを出す。
電車は何本通るんだろう。多い時は9本くらい待たなければいけない。100メートル位先にある駅の近くの踏切まで走ろうか。あっちの踏切の方がすぐに開くし、地下通路もある。
そういえば転生物の小説では事故にあって死んでしまって、その後気付いたら異世界に移動してる話が多い。
「……し、死ぬのは、ちょっと……。今読んでるweb小説の続き気になるから、まだ死ねない!」
電車が通過する時に風圧があった。後ずさりする莉子。電車は1本だけ通過して踏切はすぐに開いた。
「莉子! 何で先に帰っちゃうの?」
傘をさして春樹が追いかけて来た。大きなビニール傘に莉子を入れてくれる。
「ごめん、春樹! 早く帰ってテレビ観たいの!」
「web小説じゃないんだ」
「小説は寝る前に読むよ」
「あのさあ、莉子」
「なあに?」
「俺、今日莉子に言いたいことあって」
「えっ……」
カンカンカンカン「踏切の外に出てください」カンカンカンカン
踏切が鳴り、遮断機が下りてきた。
「莉子、お……」
「えっ何? よく聞こえない!」
風圧と共に電車が通り過ぎる。
遮断機が開いた。
「一旦渡ろう。そこのスーパーで雨宿りしようか」
莉子が雨に濡れないように肩を抱きながら歩く春樹。スーパーの屋根のある駐輪場まで来た。
「い、言いたいことって?」
「うん。お誕生日おめでとう」
「え?」
「これ、プレゼント」バッグの中からリボンが巻かれた袋を取り出して莉子に渡す。
「今日じゃないんだけど」
「へっ?」
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