13 スカートひらり


ぽすんっと莉子に投げ捨てられた春樹パンダ。

ひらっ。

「アッ」

莉子が立ち上がる時に制服のスカートがヒラリとめくれて、黄色いパンツが見えてしまった。

(派手だな)


横向きに倒れたまま放置された。


(莉子、パンツ見えたぞ。気をつけろって言うべきか? 胸大きくなったって言ったらもう押しつけて来なくなったから言わない方がいいかな。はあ、これじゃドスケベパンダじゃなくてムッツリパンダだ……。


莉子の奴、ウサギみたいにピョンピョン跳ねて走るから、学校の廊下を走る時もパンツがチラチラ見えてんだよな。

クラスの女子に気をつけなよーって言われて、恥ずかしそうにしてたけど。この前は階段をかけあがりながらパンツをチラチラさせてたし。ってかハミケツしてた。


おしり見せちゃマズイだろー。俺の横にいた男子にも見えていただろうからハミケツはなんとも阻止したいっ。……パンツが小さいのか?


あと夏生を彼女? とか聞いてきたけど何言ってんだ。女に見えないだろーが。


ふう、ぬいぐるみだと不自由だな。歩けないのかな。ちょっと力を入れてみよう。うんしょっ……だめだ。起き上がるのも無理そう……)




「サンドイッチ取りにきましたー」


ぶすぅっとしながら莉子はリビングへ行った。テーブルに、やたら具のでかいサンドイッチを並べて夏生が待っていた。いすに座ってる。長い脚が眩しくて莉子は悔しかった。


「あら? 春樹は?」


「眠っちゃいましたー」


「え〜、春樹ったら彼女ほっといて一人で寝ちゃったの? ひっどいわねえ」頬杖をつきながら夏生があきれた。


「私、まだ彼女じゃ……」


「えっ! 春樹ったら彼女じゃないのにお泊まりさせたのぉ?」


「お泊まり? してませんよ」


「またまたぁ。昨日から泊まってたんじゃないの〜?」


「いえいえお泊まりなんて誤解です。(うちでパンダとは寝たけど)」


「まっ、お泊りじゃなくても、おうちデートなんて仲が良いわね。うらやましい。いいな〜」


莉子は勇気を出して聞いてみる。

「あのう……。春樹君とはどういう関係なんですか? 春樹君とお付き合いしてるんですか?」


「えっ? お付き合い?」


「春樹君と同棲してるんですか?」


「同棲って、違う違う。春樹から聞いてないの?」


「恥ずかしいから言いづらいとか言ってて」


「あらそう。春樹ったら、恥ずかしいなんて失礼ね。じゃあクイズにしない? 私は春樹の何でしょう?」


「えっ。お姉さんでも彼女でもないなら……肉体関係?」


「やだあっ。そう思われてたの? 違うわよ〜! 安心して!」


「じゃあ、お母さん」


「そんなに歳じゃな〜い。私まだ22歳なの!」


そう言いながら夏生は両手をピースにしてカニさんのポーズをした。どうやら数字の「22」をあらわしてるようだ。


「じゃあ何なんですか? さっさと教えてくださいよ!」


「まずね、女じゃなくて男なの」


「へっ? 男の人?」


「私ね、女装してるの」


「……何者ですか?」


「春樹のお父さん」


「へっ?」


「違うわよ。冗談のつもりだったんだけどー!」


「つまんない冗談言わないでください! 信じちゃうじゃないですか!」


「22歳で高校生の息子がいるわけないでしょ! 正解は春樹のお兄ちゃん♪」


「おにいちゃん?」


夏生は再び両手をカニみたいにピースにして「22歳で〜す」と笑っていた。







 

 




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