21 お茶しませんかい?

「夏生さん。うちの母、女装男子好きだと思います」


「えっ、本当!?」


「女装男子が出てくるドラマとか映画好きですもん」


「あら、仲良くなりたいわ! お友達がほし〜」


 夏生と莉子は車から出た。


「お母さーん!」


「莉子。どうしたのそのパンダ。可愛い」


(か、可愛いって照れるな……。お、お母さんも可愛いですよ……)と目線だけうつむく春樹パンダ。


 莉子の母は、莉子をぽっちゃりさせた感じだ。莉子に似ている。


「お母さん、はじめまして! 僕、夏生って言います! よかったら今からお茶しませんか?」


「えっ、なになに? 莉子のお友達?」


「んーとね、同じクラスの春樹っていう友達のお兄ちゃん」


「お兄ちゃん? スカート履いてるお兄ちゃん?」


「女装男子なんです。スカート履いてますが男なんです。暑いんでお茶しましょ〜! ごちそうしますから!」


「はあ」



 三人+春樹パンダでショッピングモール内のカフェに入った。三人共、クリームソーダを飲んでいる。バニラアイスにはパンダの顔が描かれている。


「お母さん、お名前聞いてもいいですか?」


「ミコです」


「ミコさんですかあ。素敵なお名前ですね」


「そりゃどーも。莉子と音が似てるから、まぎらわしいけど」


「あの、女装男子好きって聞いたんですけど……」


「ああ、テレビで見るの好きだけど、実際に話すのは初めてで。キレイですね。腕ツルツル。除毛してるの?」


「あっもともと腕毛は薄いんですよ〜」


「はあ、羨ましい。私、毛深いから毎日そってるのに」


「ヒゲは毎日剃ってます! 永久脱毛しようかなって考えてるんですよね〜!」


「えっ、夏生さんって女になりたいの?」莉子が驚く。


「違うわよ! 毎日ヒゲそるのってめんどくさいの〜! ってすみません、こういう喋りなんです〜」


「大丈夫ですよ。うちの子と仲良いんですね。」


「失礼しましたッ。ミコさん、お仕事聞いてもいいですか? ちなみに僕はアパレルの倉庫で働いてます!」


「下着のフロア担当で毎日楽しいんだって」


「莉子ちゃんたらっ、何言ってるのかしら〜?」


「テンション高いですね。私夜勤明けだから眠くって。看護助手やってます」


「あら眠いのに呼びとめてスミマセン!ってことは職場で白衣きてるんですか? 僕制服フェチなんですよね! 着てみたくって!」


「うちの病院は看護師は白で看護助手は水色の白衣です」


「僕が働いてる倉庫はコスプレ服のフロアもあるんですよ! たまに手伝いに行くんですがいろんな服があって楽しいですよ! 看護師の白衣もサイズがS・M・L・LLとメンズがあって、男も着れるようになってるんですよ!」


「あっ。その倉庫、私日雇いの派遣で行ったことある」


「えっホントですか?」


「すれ違ってたりしたかもねー」


「そうですね! あのっ、また今度ご飯食べに行きませんか?」


「いいですよ」


 夏生とミコは連絡先を交換をした。


「じゃあ、そろそろ買い物して帰ります」ミコはクリームソーダを一気飲みしてお店を出ていった。



「うちのお母さん年下好きだから夏生さんのこと好きになっちゃうかも」


「えっ、そうなの? 13歳年下でも?」


「たぶん」


「莉子ちゃんは……いいの? 私がお父さんになっても……」


「……お母さんがいいなら……」


「オイオイ、まだ付き合ってもないだろ」と春樹パンダがしゃべってしまった。








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