20 女装男子ってモテますかい?

 夏生がスマホでぬいぐるみの洗い方を調べる。「ん〜とねぇ。ぬいぐるみクリーナーでキレイにする方法があるんですって。二千円ね。重曹でキレイにするのだと、百均で買えば百円ね」


 春樹パンダは(ぬいぐるみクリーナーってなんだ? 変な液体かけられるのヤダよう。あと重曹って? 重曹の粉まみれにされるのか?)と不安になった。


「安い方がいいですか?」莉子は夏生が値段を強調していうので気になってしまった。


「ちゃんと使ってくれるなら、いくらのでもいいわよ〜」


「うーん、簡単なのがいいです」


(そうだな。莉子はめんどいことはやらないだろ)


「じゃあ、日なたに干すのはど〜お? 日干しに勝るものはないわ」


(えっ、暑いのはヤダ……)


「陰干しするように洗濯表示にあるんです」


「短い時間なら大丈夫じゃない? 布団と一緒に干してく?」


「あっ、まだいいです。パンダも一緒にお買い物に行きます」


(そうだ。俺をボディーガードとして連れて行ってくれ! 夏生と莉子が二人きりなんてダメダメ!)とブンブン首を振る春樹パンダ。


「オウケイ、分かった。出発しましょ〜。何を買うかは向こうで決めましょ」夏生が車を運転してショッピングモールへ向かう。


「夏生さーん。夏生さんはどうして女装するようになったんですかー?」と莉子が後部座席からたずねる。


「ん〜とね、高校の時演劇部だったんだけど女装する役をやったのよね。そしたら部員にかわいいかわいい、女子よりかわいいって言われちゃってその気になっちゃって〜」


「そーなんですかー」


「高校一年の時からだから、結構長くやってるわ。六年くらいかな」


「女装男子ってモテそうですよねー」


「モテないわよ。男がこんな格好してモテるわけないじゃない」


「じゃあ、なんでやってるんですか?」


「楽しいからよっ。レディースの服大好きなの。高校の時、百貨店デパートの紳士服売り場でバイトしてたんだけど、あの時はつまんなかったわあ。たまに婦人服売り場を通りかかると華やかで羨ましかった〜」


「ほへえ」


「あとね、メイクするのも大好きなの〜」


「ほへえ」


「莉子ちゃん、ちょっと聞いてる?」


「聞いてますー」


「『ほへえ』しか言ってないじゃな〜い」


「ほー! へぇええ! そうなんだー! という気持ちを込めて言ってます。夏生さんは職場でも女装してるんですか?」


「職場ではね、作業着なの。スッピンよ〜」


「ほへえ」


「あんまり興味なさそうねえ!」


「そんなことないですよー。女装の服ってどこで買ってるんですか?」


「お店に買いに行ったり、通販だったりいろいろね〜」


「ほへえ」


「私の女装の先輩に、今は通販があるから便利ねって言われたわ。その先輩はその昔、近所の中学のセーラー服を指定販売店に買いに行ったら『中学生にしか売りませんよ!』って怒られたそうよ」


「ほへえ」


「はい、莉子ちゃ〜ん。ショッピングモール着いたわよ〜」


「はーい。あっ、お母さんだ!」


車の外に自転車チャリに乗った莉子の母がいた。








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