23 おばさん
「チビっ子達におばさんって言われたくらいで怒るな」春樹パンダがリュックの中から見上げる。
「誰がおばさんだって?」莉子は
春樹パンダは身震いした。「莉子、顔! 顔! 怖い」
「だって私まだ16歳だよ。おばさんじゃないよッ」
「チビっ子から見たら高校生は、おばさんなんだって」
「もうッ、おばさんおばさん言わないでよッ。春樹なんてキライ!」
「えっ……」
(ガーーーーーン)春樹パンダはショックを受けた。
「そ ん な……」
(『お前ら付き合ってんの? 付き合っちゃえよ』っていろんな人に言われるくらい仲良かったのに……)
「早く夏生さんのところ行かなきゃ。トイレ長いって思われちゃう」夏生のいる化粧品売り場へ走った。
(キライキライキライキライ春樹なんてキライ春樹なんてキライ春樹なんてキライキライキライキライ)春樹の頭の中で莉子に言われたキライがこだまする。
「ウウウッ」春樹パンダは泣いてしまいたい。でもぬいぐるみだから涙なんて出ない。
「春樹うるさい」口を莉子の手でふさがれた。
(泣くこともできず、わめくこともできないなんて……。ぬいぐるみはツライ)
「夏生さーん、お待たせしましたー!」
「あら、莉子ちゃん早かったのね〜。ねえねえ、パンダのリップがあったけどいるう?」
パンダの形の入れ物のリップスティックが売っていた。「えっ、こんなのあるんだ。可愛い!」
(ウウウッ、莉子に嫌われた。もう生まれ変わりたい)
夏生はパンダのリップを莉子に買ってあげた。「今、使ったら? くちびるガサガサよ〜」
「えっ、そうですか?」
「もう、鏡見なさいよ〜」
「あっ、ホントだ。ガッサガサ」リップをぬりぬりする。
鏡ごしに莉子の顔を見上げる春樹パンダ。
「次は下着売り場行ってい〜い?」
「いいですよー」
女性用の下着売り場に着いた。
「あら、可愛い〜。パンダの下着がある〜」
「ホントだー!」歓喜する莉子。
マネキンがパンダの柄のブラとショーツを着ていた。
「莉子ちゃん、これほしい?」
莉子は値札をめくった。「結構高いですよ」
三万円超えていた。
「ホントだ〜。高〜い」
(夏生から莉子に下着のプレゼントなんてダメダメ!)春樹パンダはブルブルふるえた。
「ウグッ」莉子に、おさえつけられた。
「何か変な音しなかった〜?」
「えっ、そうですか? 何も聞こえませんでしたよ!」(しまった。春樹の声聞こえたかな。)
「そう〜? ま、いいんだけど」夏生は自分の下着を買った。
「夏生さん、お買い物好きですね」
「金遣い荒いなコイツって思ってるでしょ〜?」
「そそそそんなことないですよー」
「毎日買い物してるわけじゃないから多めに見てちょ〜だい。昨日お給料入ったばかりなの。あら? 私何か忘れてる〜。何か買いに来た気がする〜」
「一人で寝るの寂しいからぬいぐるみ欲しいって言ってませんでした?」
「ああ! そうだった〜。雑貨屋さんどこかしら?」下着売り場を出た。
春樹が小声で莉子に話しかける。「おい、莉子」「なに?」
「ぬいぐるみは三階の雑貨屋にあるぞ。このパンダもそこで買ったんだ」
「そうなんだ。静かにしてて」
「モガッ」莉子は春樹パンダの口を手で塞いだ。
(ウググッ)
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