34 寝てる本体を

「そっか、寝てるんだから起こせばいいのか」カエルマネキンはピシッとムチをふるった。


「ギャー、危ないからムチやめてってば」莉子うさぎはソファーの上でムチをよける。


「どうする〜? 莉子ちゃんから先に起こす? それとも春樹から〜?」


「春樹からにしてくださいッ。このカエルマネキン、気持ち悪いですッ」


「ヒドイ……。気持ち悪いって。俺だって好きでこんなカッコしてる訳じゃないのに……」落ち込むカエルマネキン。


「大丈夫よ〜。可愛いわよ〜」


「可愛くはない……。ひどいぞ莉子。自分は可愛いうさぎのぬいぐるみだからって! 傷付いたぞ」


「あ……ごめん春樹」


「気付いたらカエルマネキンになっていた。こんな気持ち、莉子には分からないんだ! ウワーッ!」


ガッガッガッガッガッ


カエルマネキンは走って春樹の部屋に向かった。


「ごめーん春樹ぃ!」


「追いかけましょ〜」夏生が莉子うさぎを抱っこしてカエルマネキンのあとを追う。




「起きろー、起きろ俺!」寝てる春樹本体を揺さぶるカエルマネキン。


春樹本体は起きない。


「起きろー、起きろー」春樹本体をくすぐるカエルマネキン。


「大丈夫ぅ〜? くすぐったりしてお漏らししない? 春樹ずーっと寝てるんでしょ?」


ハタと動きの止まるカエルマネキン。


「おねしょですかあ?」莉子うさぎが夏生の顔を見上げる。


「春樹小さい頃よくしてたのよね〜。おねしょ〜」


「バラすな。くすぐる作戦はやめる。おねしょは困る」


「どいて〜。やっぱり私がチューしてあげる〜」


「えっ兄弟BLですか」嬉しそうな莉子うさぎ。

「ええっ、ヤメロヤメロ」慌てふためくカエルマネキン。


ブチュ 


夏生は寝てる春樹本体にチューをした。



ガラガラガシャン

崩れ落ちるカエルマネキン。


まぶたを開ける春樹本体。


「「あっ、起きた」」驚く夏生と莉子うさぎ。


「うわっ、夏生ヒゲ青くなってるぞ」夏生を見て声を上げる春樹。


「ヒゲ青いとか余計よ〜。このクソガキ〜! 私メイク直してくる〜!」夏生は莉子うさぎを置いて出ていった。


「春樹ぃ!」春樹本体の胸に跳びつく莉子うさぎ。


「莉子! わーい、フワフワだな。へニョへニョだな。かわいい」莉子うさぎをなでなでする春樹。


「キャハハ。春樹ぃ、くすぐったいよー」

長い耳でピシッと春樹の顔を叩く。


「痛ッ」顔を抑える春樹。


「あ、ごめん」


「ハッ。そうだ、莉子にチューしに行かなきゃ!」


「ええ、春樹」


起き上がる春樹。「ウッ、頭痛い」よろける春樹。


「ずっと寝てたもんね。とりあえずトイレ行って、顔も洗ってきたら?」


「いいや、その前に莉子にチューを!」


「春樹。目ヤニすごいし、お口臭いから顔洗ってうがいしてよ」


「……」

















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