16 カエルグッズと下着フェチ
「うう莉子ぉ〜。何で助けてくれなかったんだ」
「ごめんごめん。喜んでるのかと思って」
「喜んでない……」グッタリした春樹パンダが莉子の首元に顔をうずめる。よしよしと春樹パンダの背中をさする莉子。
夏生が「電池切れかしら?」というほど最後の方は、
「夏生め……。執拗に撫でやがって。あやうく意識が飛ぶところだった……。ん? 待てよ。もしかして」(意識が飛んだら元に戻れる?)
「どうしたの、春樹」
「元に戻る方法を考えたんだ。んん、でもやっぱりまだパンダのままでいたいかも」
今はぬいぐるみだから莉子は俺を抱っこしたり、頰を擦り寄せてくるが、人間に戻ったらそれはなくなるんじゃないか。しかし今眠ったままの自分の本体はどのくらい寝ててもよいんだろうかと春樹パンダは考える。
夏生は自分の部屋に行っている。出かける前に布団を干したりしたいそうだ。4ヶ月分のホコリをかぶっている部屋で、夏生はゲホゲホ咳き込んでいた。
「莉子ちゃん、ちょっとこっち来てもらってもい〜い?」
「はーい」
春樹パンダが小声で「莉子。今さらだが、夏生はあんな格好してても女好きだから気を付けろ」
「えー、女好きは春樹と同じじゃん。それに私から見たら22歳なんておじさんなんだから、大丈夫だよ」
「莉子は大丈夫でも、俺が心配だ。それからアイツの部屋は行かない方が……」
「いいじゃん、女装男子の部屋見てみたい」夏生の部屋を覗く莉子。「うげっ」
部屋はカエルのキャラクターでいっぱいだった。
「うっわぁ、私の部屋のパンダよりたくさんある」
カエルの置物、カエルの財布、リアルなカエルから、可愛くデフォルメされたカエルまでところ狭しと置かれていた。
特に目立っていたのは、女性の体をしたマネキンだ。頭はカエルになっていて、体は赤と黒のレースのブラジャーとパンツとガーターベルトが着せられていて、右手にムチを持っていた。
「気持ち悪い……」
「あら、カエル苦手?」
「んー、得意ではないですね。夏生さん、カニが好きなんじゃないんですか?」
「カニはねぇ〜、食べるのは好き。キャラクターとしてはカエルが好きよ。だって可愛くない?」
「うーん、そうですかねえ。あと聞きたいんですけど、何ですか? このマネキン」
「下着フェチなのよね〜。自分で履くのも良いけど、下着自体を見るのが好きなの〜。普段はアパレルの倉庫で働いてるんだけど、下着のフロア担当なの。毎日楽しいわよ〜。通販の会社だから忙しくて連休も毎日が休みってわけじゃないけど」
「へええ」
「あ〜、莉子ちゃん。これ見てみる?」
「何ですか?」
「アルバム。春樹の女装写真もあるわよ」
「えっ、春樹が女装?」
春樹パンダがピクッと動いた。
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