25 莉子もうさぎになれば
夏生の車に乗った。カエルとうさぎのぬいぐるみは店で入れてくれた袋から出した。カエルは助手席。莉子とうさぎは後部座席。春樹パンダの入ってるリュックと一緒に抱きかかえてる。
莉子が夏生に話しかける。「うさぎもカエルもフワフワでふにょふにょですね」
「そうね〜。莉子ちゃんのパンダと同じシリーズのぬいぐるみみたいね。肌ざわりがいいわ〜」
(ほんとフワフワのふにょふにょだな。かわいいなあ、このうさぎ)
春樹パンダがうさぎのぬいぐるみと両手を合わせる。二体とも手が小さい。人間の耳くらいの大きさだ。
(莉子がこのうさぎに乗り移ってくれないかなあ。そしたらお互いぬいぐるみのままで布団の上を転げ回ったり、フワフワの体でどつきあったりして楽しいだろうなあ)
春樹パンダは莉子うさぎとイチャイチャしてるところを想像して、ニヘラっとしているが、ぬいぐるみなので顔に出ない。
うさぎのぬいぐるみの耳は長くて立っている。春樹パンダの耳の三倍くらいの長さだ。
アパートの駐車場。
「はい、着いたわよ〜」
「ありがとうございます!」
夏生と莉子は車から降りて、アパートの部屋の玄関に入った。
「あら、よく見たら廊下がゴミだらけね〜。莉子ちゃんのスリッパも買ったほうが良かったわ」
「いえいえ、そんなお構いなく。しょっちゅう来るかも分かりませんし」
「春樹ったら掃除しといてよね〜。まだ寝てるのかしら」
「疲れてるんですよ、きっと。あっ、よかったら私が掃除しますよ。夏生さんも疲れてますよね。休んだほうがいいですよ」
「あら、悪いわね〜。掃除機あるから使って〜。んじゃ、私はテレビ見てるわ」夏生はカエルとうさぎのぬいぐるみと、その他の買ってきた物を持ってリビングに行った。
(そろそろ起きないと怪しいかな。なんとかしないと。あっ、その前に莉子とお互いぬいぐるみ姿でイチャイチャしたい。莉子がぬいぐるみになるにはどうしたらいいんだ?)
春樹パンダは考えをめぐらせた。
(うーん。俺は金縛りにあったら乗り移ってたから、莉子も金縛りにあえばいいか? それじゃなきゃ……)
莉子が夏生に聞こえないように小声で話しかける。「ねえねえ、春樹。コンセントどこ?」
「玄関の近くの壁にあるぞ」
「あったあった」プラグをさす。
莉子は春樹パンダの入ったリュックを背中側にしょい直して掃除機をかけ始めた。
ガーーガーー
ガーーガーー
「洗面所も掃除機かけてくれるか?」
「ラジャ」莉子はプラグを抜いた。洗面所に移動しようとしたその時「うわあっーーー!」掃除機のコードに足をからませて転んだ。
バタンッ
「えっ、おい」
倒れて動かない莉子。背中のリュックの中であせる春樹パンダ。
「あらあら、どうしたの〜?」夏生がカエルのぬいぐるみを抱きながら様子を見に来た。
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