11 一人暮らしだって言ったじゃない

「春樹ぃ。早く開けて〜!」ピンポンピンポンピンポンとインターホンが連打される。


「うるさいなあ! ちょっと待ってろ! あ、でも莉子見られたくないな。どうしよう」


「だあれ? 春樹、お姉さんいるの?」


「いや姉じゃなくて」


ガチャッと外からドアが開けられる。

「あっ、なんだ鍵開いてるじゃな〜いっ。あらっ? だれ? 春樹はどこ?」と莉子を見下ろす。


莉子は緊張で春樹パンダをリュックごしに、ぎゅっと抱きしめた。「えっ、えっと」


「まぁいいわ、トイレ行きたいからっ」と靴を脱いで莉子の横を通り過ぎた。バタンッ! とトイレのドアが閉められる。


「莉子、早く俺の部屋に戻ろう」


「え、うん……」


春樹本体が眠る部屋に戻る。

スピー、スピーと寝息が続いている。

莉子は入口の近くのカーペットの上に座った。春樹パンダが、ふうとため息をつく。


「バレる前に何とかしないと」


「何がバレちゃいけないの?」


「え?」


「春樹、一人暮らしだって言ったじゃない。嘘つき」


「うそ?」


「そう、あの人と一緒に住んでたんでしょ」


「そうだけど」


「はぁぁぁぁあ? ちょっと何あっさり認めてんのよ。言いわけぐらいしなさいよ!」

莉子は春樹パンダの両耳をみよ〜んと横にひっぱった。





 



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る