白い思い出

 こんなにも春の陽射しが暖かいのに

 君は俯いたまま何も言わなかったね

 思い出は優しいものばかりじゃないけど

 今年もあの白い花がここには咲きました


 狭い部屋だから荷造りも大して手間じゃない

 一人だからどうにでもなるよと

 そんな淋しい笑顔も君は見せずに

 町外れのバス停から何処かに行ってしまった


 世界は時に汚れてて そして残酷で

 そんな醜さを繋ぎ止めるためだけに

 どうして君が奪われたのか ただ傷つく

 それだけのために 君の体と 心を


 振り返っても悲しくなるだけだろう

 何も出来なかった僕など忘れてしまえ

 君のために涙を流すことしか出来なかった

 君の名を呟くことしか出来なかった


 壊したいものが山ほど増えた

 祈ることと呪うことの区別がなくなった

 いつからか君の名を呟かなくなることが

 怖くて眠れない そんな夜もあった


 こんなにも春の陽射しが暖かいのに

 僕は俯いたまま何も言えなかったね

 あの花は今年も雪のように白く咲き

 思い出の中に降り積むような気がします

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