SNOW

 凍えるような大気を吸い込み

 僕は立ち尽くした

 銀色のとばりが 遠い君を

 思い出を 閉ざしかけた


 指きり交わした約束を

 せめてもの頼りにして

 歩いたことも忘れていた

 それほど僕は幼かった


 砂粒のようにありふれた僕さえ

 好きでいられたのは君がいたから

 孤独な君が教えてくれたんだ

 正しいものはいつもここにあると


 傷ついた獣のように

 傷跡を舐めてばかりいるけど

 あの場所で君と出会えたことは

 ささやかなプライドだと思うんだ


 大気に雪が混じり始めた

 小屋も傘もないこの場所からは

 誰のものでもない言葉があふれるよ

 まっすぐに君を好きでいたよ、と

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