カミサマ

 雨上がりの路地裏に

 からっぽの夏があった

 水たまりが物憂ものうげに光り

 私はカミサマと出会った


 雨宿りの駄菓子屋で

 古びた時間の匂いを嗅いだ

 私によく似たカミサマは

 世界に思いを馳せていた


 そんなにも隣にいたカミサマが

 見えなくなる日がやって来た

 かき氷は昔のままの味なのに

 ラムネは無数に泡立つのに


 私は世界に思いを馳せた

 大人になれないカミサマのかわりに

 私は広い時間を望んだ

 からっぽの夏を置き去りにした


 もう出会わないカミサマの影が

 路地の片隅に伸びている…

 それは生き残ったイマージュなのか

 あるいは彼岸ひがんの微笑みなのか


 わからない、けれども。

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