旅立つ勇者を見送る母の子守唄
おやすみなさい、可愛い坊や
不完全な世界を繋ぎ止めるために
あなたは明日、旅立ってしまう
わたしがどんなに引き留めたとしても
お眠りなさい、わたしの坊や
生まれ育った小さな家も、庭も、
思い出を秘めた日用の
今夜限りの見納めになるでしょう
わたしとあの人の、優しい坊や
どうして、どうしてあなたなのだろう
どうしてあなたが旅立たないと
世界が滅んでしまうというのだろう
幼い坊や、こんなに月の明るい夜だから
わたしの涙はとめどなくあふれる
こんなに穏やかな優しい夜だから
わたしは不完全な世界を呪ってやまない
今はおやすみ、愛する坊や
あなたの旅立ちに涙は似合わない
あなたは泣きもせず旅立つでしょう
わたしにできることはあまりに少ないでしょう
いっそなにもかも終わらせたい、わたしだけの坊や
こんな世界など滅んでしまえばいい
いくたびそう思ったかわからない
でもそれはあなたの心の願わないこと
さあ、おやすみなさい、可愛い坊や
不完全な世界を繋ぎ止めるために
あなたは明日、勇者となるのでしょう
それをわたしは誇りに思うでしょう
わたしはあなたの思い出になりましょう
遠く離れたものがあなたの内で
揺るぎない支えとなることを
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