Disaster(災厄)

 永い冬が終りを告げる頃

 灯台守の少年は「災厄さいやく」を見た

 春の息吹と足音に混じって


 その「災厄」というやつは

 まるでたんぽぽの綿毛のように

 少年の世界に舞い降りてきた


 ふうわりふわり

 ふうわりふわり


 港町の少女のために

 少年は「災厄」を花束にした

 言葉を知らない少年の、初めての贈り物


 ふうわりふわり

 ふうわりふわり


 少女は「災厄」を抱きしめて

 ふたりは海岸を散歩した

 言葉を知らなくても、世界は輝いていた


 ……

 ……

 ……


 短い春が終りを告げる頃

 荒廃した港町と灯台には

 あの「災厄」がいちめんに咲き乱れていた


 ふうわりふわり

 ふうわりふわり……

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