失楽園

 花園の花が散る秋の日に

 獣は静かに爪を研いでいた


 つたの絡んだ城門は朽ち果て

 武士もののふはもう一人も帰ってこない……


 深夜の鏡の向こうの楽園で

 双生児は月の光の酒を呑む


 一塊ひとくれの土にも銀河は眠っている

 星座は巡り、旅人は流離さすら


 神々は渇き、凍てつく砂漠のほとり

 獣は静かにつるぎを研いでいる

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詩篇『VISAGE(顔)』 長門拓 @bu-tan

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