これは運命の転機に立ち向かう主人公の物語です。ある日、主人公は寄宿舎で自分と瓜二つのエイリアンと出会います。ただしこのエイリアンは、単なる異星人とはちょっと違う存在。彼は入れ替わることを提案し、主人公は思い切って承諾するのです。
読みやすい文体に誘われて読み進めると、読者は一体どのような結末を迎えるのかと、期待と不安を抱えながら物語の展開を追うことでしょう。主人公が自らの運命と向き合い、理不尽で残酷な世界を知っていく様子には、胸に迫るものがあります。
この小説で一番好きなところは、勧善懲悪でも因果応報でもない結末です。一見してすっきりしない結末かもしれませんが、その『すっきりしなさ』が魅力となっています。読者は自分なりの解釈を持ち、物語の余韻に浸りながら考えをめぐらせることができるのです。
奇妙な魅力に満ちた世界観と、ひと味違った結末に興味がある方にはおすすめの短編です。是非手に取り、読んでみてください。
誇りを持って受け入れるべきものとして、真の意味も知らないままに明朝の「出荷」を待つ主人公の「ぼく」。
その前に突然現れた不死のエイリアンに「入れ替わり」を提案されたことによって、「ぼく」の運命は大きく変わります。
無垢な「ぼく」と、人体を解体する闇医者。それぞれの視点で描かれるエイリアンは、ほがらかでひょうきんな一面と、冷酷で強かな一面を併せ持ち、不死身だからこその強気な発言にぞくりと恐怖を覚えました。
臓器提供を待つ「わたし」の夢の中で、エイリアンと入れ替わった「ぼく」が語る言葉が胸に刺さります。エンターテインメントでありながら、現実の残酷さを思い知らされ、「いのち」の軽重を考えさせられる、とても奥深い短編でした。