3人目

 やっと、2人目が終わった。布団に倒れ込みながら雀さんの笑顔を思い浮かべる。

 最初、俺は美紗がどうしてこのようなことをしたのかよく分からなかった。だが今は、少しずつだが、分かってきたような気がする。

 もう美紗は帰ってこない。一生会うことはない。会話も出来ない。でも手紙があれば、ただそれだけで、きっと──。

 俺は、結局美紗がどんなやつだったのか、よく分かっていない。そしてあの日から、1回も泣けないまま今日まで来てしまった。

 でも、もし会えていなかったら、もしこの手紙のことがなかったら、きっと俺は大した目標もなく今まで過ごしてしまっただろう。

 だから、最後の手紙もちゃんと届けなくてはならない。そして、これが終わったら俺は、自分で自分のために目標を立てる。しっかり、美紗の分もしっかり、生きていくために。




 封筒を机の引き出しから取り出し、中の封筒を見る。それは白いシンプルな封筒で、他の分厚いものや、色つきのものより地味。だからだろうか、1番最後になってしまった。

 だがそれは、きっと美紗も見越していたのだろう。狙ったように1番最後に回ってきた地味な手紙。その手紙の後ろには隅に小さく、


 ──君へ


 そう書かれていた。


「なんで……」


 思わず声が漏れる。

 まさかあるとは、思っていなかった。最後の番狂わせ。

 のり付けされた上に、申し訳なさげにシールが貼ってある。衝動的に開けようとして、そこに指を持っていき、俺は手を止めた。


 読めない。


 俺はまだ、読めない。美紗のことを何も分かっちゃいないのに。

 ……いや、そうじゃない。怖いのだ。入学してからの3ヶ月。たったの3ヶ月で、俺は美紗のことを知っていたのか、不安になってしまっている。だから読むのが、怖い。

 今はまだ、読めない。


 俺は手紙を、そっと引き出しにしまった。

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