俺が知っていた頃の君
その日の夜、俺は何をしても集中できなかった。好きなゲームやCD、美紗からもらった本すらも、全てに集中できなかった。
早く寝ることに決めたが、結局、考え事で中々寝付けない。
その考え事というのは、美紗のことだった。
小学生の頃を思い返すと、美紗は真面目で学級委員などを任せられることが多かった。話し合いではふざける人も多かったし、クラスメイトを注意しなければならないことも多く、煙たがられることもあったように思う。
今日、うちのルーム長を見ていて、大変そうだと感じたが、美紗もあのようなことをしていたのかと思うと、今度はどうしてそんなことをしていたのかと思ってしまう。
頼まれたから、というのが大きいだろうが、だからといって楽にこなせる仕事ではないわけだし……。
──無理してたのかな。
そんな風にすら思えてくる。
いつも真面目で、人を助け、“正しいこと”を貫き通す。それが、美紗。そうであったはずなのに……。あんな仕事でも人の役に立てるならと喜んでやりそうなやつなのに……。
なぜだろうか。彼女は本当にそんな人であったのか、分からなくなる自分がいる。
俺の中で美紗として確立されていた1人の少女が、少しずつ崩れていくような、そんな怖さを──。
「案外、知らないもんだよな」
俺は、誰にともなく呟いた。
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