文化祭が始まる
結局あれ以上の進展がないまま、考査を迎え、終えてしまった。4日にわたるテスト。先生探しも一緒だと考えると、さすがにキツいものがある。
俺の精神的な体力は限界を迎えていた。そして、それに追い打ちをかけるかのように部活と文化祭。おお、神よ。俺に慈悲を。
そんなことをうだうだ考えながら部活の休憩中に体育館の少しだけ冷えた床で寝ていると、指でつつかれた。
雅樹か大翔だろうか。その人の方に顔を向けると、小林先輩と目が合った。
「部長!」
「お疲れ。どうかした?」
部長はスポーツ飲料をがぶ飲みしながら尋ねる。
「いや、テストに疲れて……」
それを聞くと先輩はからからと笑った。
「あー、なるほど。
俺も最初の方はそんな感じだったなぁ。
まあ、1年生の内は不登校にでもならない限り留年しないから気楽に行けるよ」
「そうなんですね」
「あ、でも気を抜きすぎると俺みたいに単位1つ落としたりするからそこは気を付けてね」
受験生の先輩は悲惨な顔をしながら乾いた声で笑った。
……ああはならないように気を付けよう。
その決意を見抜かれたのか俺は先輩にデコピンされた。
「痛い……」
「失礼なこと考えたな、お前」
恨めしげな顔をすると、先輩は去っていった。
「──と言うことで、皆さんにはこの分担通りに作業してもらいたいと思います」
次の日、LHRでは文化祭の装飾の役割分担が決まった。
俺は大翔と同じ担当で、教室後方の左隅。
俺と大翔の他に男子が2人、女子2人。グループがそこで3分割になるような気がするが、今は気にしないこととしよう。
装飾の指示は、すでに構図があるのでそれに従って作れとのことだった。それらを決めてくれた人たちは毎日放課後残っていたという。ありがたや。
「ねえ、眞琴。これの作り方分かる?」
大翔が指を差している先を見ると、花飾りの図があった。形は例えるなら八角。色は赤。柄はいかにも琉球といった花が散りばめられた──あれ?見覚えがある。
そうだ、この前の駄菓子屋の飾り。それによく似ている。だが、
「分からん。
手芸なんてやったこともないし、ムリ」
作り方なんか分かりゃしない。
この手のことは昔から苦手だ。そう言えば、美紗は得意だったっけ。家庭科の時間に世話になった記憶がある。全部やらせるなって、少しだけ怒られた。
そんな風に感慨にふけっていると、大翔が思い出したように「あっ」と声を上げた。
「これ見たことあった。
この学校の文化祭に来たときに」
そして上着のポケットの中からスマホを取り出すと俺に画面を見せる。
「これ、付属の中学校の展示物にあった」
確かに図面にあったものとそっくりなものが写真には写っていた。大小の琉球情緒漂う綺麗な赤い花が、赤く細い糸によって吊り下げられていた。
「あ、これ作った人内進生にいるじゃん」
「じゃあその人に作り方聞けばいっか」
作り方を知るあてができたところでチャイムが鳴った。
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