ヒント?
「雅樹~。この花飾り作ったのって誰か分かる?」
部活後、男しかいないむさ苦しい(それと微々たるミント臭)部室で俺と大翔は雅樹に文化祭の写真を見せていた。
雅樹は写真をじっと見つめると、何かを思い出そうとするように頭をかく。
しばらくするとしかめっ面が終わった。
「そうだ。柊だよ、これ作ったの」
その言葉に俺は思わず反応した。
「柊って、柊美紗!?」
「えっ、そうだけど……。
知り合い?」
食い気味に聞き返す俺に雅樹は驚いたような、困惑したような表情を見せる。
大翔は大翔で、俺の反応に違和感を覚えたようで、眉を下げている。
「俺と眞琴は同じ学校だったからね」
「でもなんでそんなに食い気味に?」
「えっ……それは、その……」
──しまった。
大翔も雅樹も美紗が死んだことを知らないのだ。葬式だって多くの人が来ていたわけではないし、美紗はきっと病気のことも死んだことも隠し通す気だったのだ。
でもこのままでは2人にバレてしまう。俺があんな反応したばっかりに。
どうしたものか悩んでいると、大翔が何かに気づいたような顔をした。
「もしかして……」
マズい……!
「眞琴、まだ美紗のこと好きなの?」
……は?
こいつは、何を言い出すかと思えば……!
「はあぁぁあっ!?」
思わず俺の口から大声が漏れる。
「ないだろっ!それは!
会わなくなって何年だよ!っていうか、好きではあったよ!?でもそれは、友達としてであってだな!
恋愛的な感情は、これっぽっちも──」
早口で捲し立てる俺を見て、大翔と雅樹は悟ったような顔をする。
大翔は俺の肩に手を置き、
「初恋をそんなに引きずるな」
と、一言。
雅樹はいつも通り上から俺を見て、
「お前、嘘下手だな」
そう、一言。
「ふっざけんな!
友達として好きなの!大翔や雅樹に対する感情と一緒!」
「にしては、顔が真っ赤ですが?」
言わせておけば……!
こんな会話をしながら俺は、美紗の話を冗談として話せている自分に気が付いた。
俺はここで、何をしているのだろうか。
たまに美紗のことを忘れたような行動をする自分に妙な不信感が募った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます