第3章 君がしたかったことは?

秘密の帰り道

 梅雨は嫌いだ。雨が多い。ジメジメするし、学校は雨漏り。いいことなんて、まるでない。

 そんな雨の日の放課後、俺は1人でいつもと違う道を歩いていた。美紗の手紙のヒントと同じ道だ。今日は考査の1週間前なので部活はない。丸1週間を手紙の相手探しに使えるわけだ。

 都会とも言い難く、田舎とも言い難い。そんな中途半端な町。あたりを見周してもあるのは家ばかり。

 本当にこんなところにその人はいるのだろうか。不安を覚えながらも地図に沿って歩いていく。

 家。家。家。家。家。家。川。バス停。家。家。駄菓子屋。家。コインランドリー。家。家。小学校。家。

 言葉通り、完全な住宅街。

 俺は本当に、その先生とやらを見つけられるのだろうか。




 あの日から3日経った。だが、今のところめぼしい情報はなし。

 この住宅街にある家以外のものはバス停にコインランドリーに小学校、古びた駄菓子屋に図書館。

 バス停は学校の最寄り駅行きのもの。コインランドリーはよくあるチェーン店。うさぎのマスコットが特徴的。小学校は30年前にできたものらしい。生徒数は650。駄菓子屋はおばあちゃんが1人で経営している。どうやら沖縄出身者らしく、琉球感の溢れる赤い花柄の飾りが店の至る所に置いてある。図書館は公民館と併設されていて、これもまた少し古臭い。

 この中に心当たりがあるとすれば、強いて言えば図書館か。本好きの美紗なら通い詰めていそうな気がする。

 その線で行くのなら先生と言えば司書だろうか。

 だが司書だなんて、ごまんといるだろう。

 本当に探し出せるのか。その自信は、日々すり減っていくばかりである。

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