拝啓 私を幸せにしてくれた人へ
叶本 翔
プロローグ
初めて彼女を見た日
「いい加減にしなよ!
そんなことして、恥ずかしくないの!?」
俺の学年には、ウザいと言われる委員長タイプの女子がいる。
いじめがあったならすぐに止めに入り、宿題は絶対に見せることはなく解き方を教える方針。
彼女の名前は
俺は転校生で学校に長くいるわけではないし、クラスも違ったからそのときはまだ俺は彼女の名前を知らなかった。
だから、その光景を見たときはうるさいやつもいるもんだと思っていた。
「少しくらいからかったっていいだろ!」
「でも泣かせちゃってるじゃん。
やり過ぎだよ!」
俺らと同じ6年生の男子が低学年の子の通学帽を奪って、からかいながら逃げたらしい。
そのくらい、よくあることだから放っておけばいいのに。
彼女はその男子から帽子を奪い返すと、低学年の子に渡した。
「はい。どうぞ。
ちょっと、謝んなよ」
そして、男子を鋭く睨みつける。
「へいへい。
ごめんな」
「うん……」
男子は不満そうに頭を下げた。
彼女は謝ったのを見ても、その態度に苛つきを覚えたのか目つきは鋭いままだ。
「ありがと、お姉ちゃん」
低学年の子はぺこりと彼女に頭を下げると校舎に走っていった。
男子も彼女を一睨みした後、校舎に向かって歩いて行った。
これが俺らが小学6年生の始業式のときの出来事である。
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