拝啓 私を幸せにしてくれた人へ

副文

手紙の真意

　家に帰ってから俺は、手も洗わずに机の引き出しを開けた。中には白い封筒がある。美紗から俺への、最初で最後の手紙。

　それを見ると、胸の奥で燻っていた黒い炎がまた勢いよく噴き出す。

　そして思う。自分は少し美紗に依存的だ。いや、少しではないだいぶ依存している。だから俺はこの手紙を読めないのだ。

　でも、読まなければならない。

　読みたいと思っているから。このままじゃダメだと知っているから。

　丁寧にぴりぴりと封を切る。

　折りたたまれた真っ白な便箋。

　開くと几帳面な字がびっしりと書かれていた。俺への宛名は『私を幸せにしてくれた人』へ。

　そう、だったのか。美紗はそう思っていたのか。俺への評価は、俺と美紗だと大きく違うらしい。

　俺は大きく息を吸い込んだ。

　速くなる鼓動を押さえて俺は、手紙を読み出した。