丁寧に作り込まれたダークな世界観。それを鮮明にする描写力。硬度が高いものの引っかからせない文章力。私には評価するのも憚られるほど、卓越している。 もっと評価されてほしい。この作品を見ていない人間がまだまだいるなんて、もったいない。
静かな狂気……。読み進めるうちに物語にどんどん引き込まれてしまう不思議な感覚でした。宗教の自由もそれぞれな筈、という当たり前の世界で生きている私たちにも当てはまるかも……。「正義」って大勢が剣を振りかざすものではないよね……?と自問自答してしまいました。
宗教によって人々の平和が保たれている世界。しかし神に異論を投げかけるもの、"正義"から外れるものは大勢でもってその人を非難するなど不穏さが見え隠れします。ドキドキしながら読み進めていきます。
物語中に宗教が出てくる作品は数多くありますが、物語の中心が宗教の作品は初めて読みました。幸せや平和を望む一方で、客観的に見れば狂っている陰の一面。ダークファンタジーは暗い世界観が強い印象でしたが、この作品は強い光にくっきりと残る濃い影を見つめているような感覚でした。こういう小説もあるんだ、新たな発見になりました。
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