56話読了時点での感想です。
本作は、乙女ゲームの世界に(一応)王女として転生した傭兵が、王国間の陰謀劇に巻き込まれながらもあらゆる諸問題を力でねじ伏せていくといったストーリーです。
結論から言うと、面白いです。
経済、軍事、領主間の勢力関係といった、物語の舞台となる土地や国の背景がきちんと語られていて、読んでて「丁寧に作られてるな」というのがわかります。
また、個人的に素晴らしいなと思った点は、敵役が「なぜ相手を恨み敵対するのか」といった思考や心境がきちんと掘り下げて語られており、支持は出来ずとも理解出来る所です。
単なる舞台装置や主人公の障害物になっておらず、血の通った、地に足のついた憎悪をきちんと書けています。
これは、よくある「悪役には悲しい過去が〜」という物ではありません。
「そういう状況や関係性なら、主人公に悪感情抱いてもそう不思議では無いよね。人間だもの」という自然な憎悪として書かれています。
その自然さ故に敵役の行動に疑問や違和感を抱いて引っかかる事が無く、結果として敵側の謀略パートのシーンであってもストレス無くスルスル読めます。
本作、ドラゴンノベルズで見事大賞に輝いた作品ですが、それも納得の出来です。
ファンタジー小説が好き、謀略劇が好き、痛快アクションが好き、そんな方にオススメです。
ちょっと人を選びそうな「乙女ゲー」という要素についても、そもそもその手のジャンルまったく知らない、やった事の無い熊でも問題なく楽しめた作品ですのでご安心を。