二十二年 一月 「福寿草」

 お正月のお花と言えば松や菊や千両万両で賑やかに飾りますが、窓辺にそっと置いておきたいのは福寿草です。蕾がひとつまた一つと咲いてくれるのが毎朝の楽しみです。別名を元日草といい、「新年」の季語となります。野に咲く花は二月から三月に開花します。

 おめでたい福寿草ですが、実は毒草です。とくに根に強い毒があるので間違っても食べてはいけません。ギリシャ神話では美の女神アフロディーテ(ローマ神話ではビーナス)に愛された美少年アドニスが狩りをしているときに猪に刺され、そのとき流れた血から生まれたのが福寿草(アドニス)だと言われています(ヨーロッパの福寿草は赤いそうです) おそらく俳句には全く必要の無い知識ですが。




 陽だまりの猫の隣の福寿草


 冬はその家の一番暖かい場所、夏はその家の一番涼しい場所でくつろぐ猫。

 今日は午後から暖かい陽が差したからか、珍しく庭にいます。隣ですましているのが福寿草です。猫さん、食べないでね。




 縁日の的屋てきや勇まし福寿草


 家族で初詣に行きました。屋台が軒を連ねています。綿飴やカルメ焼きの他に、お正月らしい細工物や福寿草の鉢植えも売っています。的屋さんの口上もお正月はとりわけ威勢良く聞こえます。




 ☆☆ 福寿草笑う薄日のアーケード


 駅前のアーケードはいつのまにかすたれて、薄暗いシャッター通りになってしまいました。それでも毎日店を開けているのは花屋さんで、店先の福寿草が元気に新年を告げていました。人入選でした。



 お正月といえば「春の七草」です。

 せり(根白草)、なずな御行ごぎょう繁縷はこべら、仏の座、すずな蘿蔔すずしろ

 なぜ七種中四種も難読漢字なんでしょう。遣隋使か遣唐使から習った中国語の呼び名なのかな。もともと日本にある草でも中国語でお洒落に呼んだのではないかと想像します。

 薺はペンペン草だし、御行は母子ははこ草、繁縷はハコベ、仏の座は小鬼田平子コオニタビラコ(紫の花の咲く仏の座ではありません)、菘はカブ、蘿蔔は大根です。どれも余程の都会でもない限り、そこら辺の道端(と八百屋)で全部見つかります。難点は排気ガスや殺虫剤で汚染されていないかどうか。七草粥にしたいのなら、売ってる物を買う方が無難ですが、野の花を愛する者としては複雑な心境です。

                     つづく

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