二十年 六月 「雲の峰」

 夏空の雲は堂々と大きくて、いろいろな形に姿を変えながら空を流れてゆきます。あるときは大きなお城(西洋の高い塔のあるお城)が見る間に巨大化して高い空まで占領して山のようになって、この雲の降らす雨はどんなだろうと恐ろしくなったものでした。(このときは我が家よりもやや北の地方で記録的な豪雨が降りました)

 雲の峰の傍題には「雷雲」「入道雲」「積乱雲」「峰雲」があります。


 「よ句もわる句も」に入門して一年になりました。このブログ上では一月程ですが、はたして多少は上達したのでしょうか(>_<) 全然自覚がない。でも今こうして過去の反省点を見つける作業をしているのは勉強になっていると思います。文章でも俳句でも作りっぱなしは良くないですね。少し時間をおいて見直すとアラがぽろぽろ見つかります。



 雲の波旅立つ人は振り向かず

 

 「帰省子」としたかったのですが、それでは子どもっぽく弱々しく思えて「旅立つ人」にしました。親離れした青年が主人公です。夏休みに実家に帰りはしたものの、これから先の自分の力で到達したい未来はおそらくは険しい道の果てにあり、その険しさを思うと別れ際に振り向いて手を振る余裕も無いのです。旅人の乗った列車は悠々と湧き起こる夏雲の下を遠離ります。



 遠離とおそける故郷の空に雲の峰


 前の句とは視点が逆です。ふと我に返った旅人は故郷を振り返ります。

 しばらくは戻れないであろう故郷の暖かい家族は次第次第に遠離る雲の峰の下にいて、こうしている今も自分の無事を祈っているのだろうと思うのです。それが切ないような後ろめたいようなやるせない気持ちになるのでした。



 ☆ 星を飲む鉄鈷かなとこ雲や風騒ぐ


 夜になりました。列車はひたすらに走り続けます。夜空には巨大な金鈷雲かなとこぐもがいくつもの輝く星を飲み込んでさらに巨大化し、吹き下ろす風はザワザワと森の木々を震わせるのでした。明日を夢見る青年は寝台車の座席で熟睡できないまま不安な夢を見るのでした。この句は佳作になりました。「星を飲む」はいい表現ではないかと思ったのですが、類句がいっぱいいて、考えることは皆おなじなのかとガッカリした句。



<近況報告>


 2022年7月9日現在、筆者は元気に「炎天」に挑んでいます。締切は三十一日。


 炎天や異音異臭の室外機

 炎天やマツゲ溶け出す地獄絵図

 炎天や細い日陰を奪い合う

                      つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る