二十一年 十二月 「狩」

かり」は冬の季語です。

 実際の狩猟には猟期りょうきがあり、 原則11月15日から翌年2月15日です。かつては狩と言えば「鷹狩り」のことを指しましたが、現在は「鷹狩」として別の季語になっています。

「狩」の傍題はたくさんありまして、猟、狩猟、猟解禁、漁期、しし狩、鹿狩、兎狩、熊突、熊打、狩人、猟夫さつお、猟銃、猟犬、狩座かりくら、狩の宿。(釣りは「夜釣り」以外は季語ではありません)


*熊突というのは猟師さんが槍で熊を突くこと。

*熊打ちとはなにか不明です。御存知の方、いらっしゃいましたら教えてください。

*狩座とは猟場、もしくは狩そのものを差します。


 二月の兼題「野焼」も今日ではレアなイベントでしたが、「狩」といったら日本人の九割(適当)は経験してないのでは。ただ筆者は「鬼将軍と龍の宝」という長編童話を書いたときに鷹狩りについての資料を数冊読んだので、ここで役に立ちました。




 雪原を熊追うマタギの村田銃


 マタギという人々は熊などの大型の獣の狩を生業としてきた伝統的な狩猟民族ですが、いまでは激減しているそうです。その鋭い目が熊を捕らえ、担いできた村田銃(明治期以降日本軍が使用した銃)で狙い撃ちする瞬間を想像してみました。時代は昭和初期くらい。うわあああ、熊は季語だったー。季重なりだあ。




 硝煙の匂いまといて狩の宿


 その日の猟は終わり、猟師は疲れ果てて狩の宿に引き上げます。

 一風呂浴びて、硝煙の匂いを流し、明日の狩に備えるのです。

 季重なりがなんだ。明日があるさ。




 ☆☆追い詰めし猟師たじろぐ狐の目


 季語は「狐」です。少し前に読んだ猟師さんの言葉を紹介します。他の獣は最後の最後まで逃げようとしたり、向かって来ようと暴れたりするのだけれど、狐だけは絶体絶命にまで追い込まれると、暴れるのを止めて、すっと狩人に正対して、じっと猟師の目を見つめるんだそうです。なぜだかわからないけど、狐はみんなそうするんですって。狐が人を化かすというのは、あの目のせいではないか、というお話でした。

この句は人入選でした。

                             つづく

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