二十一年 十月 「鶏頭」

鶏頭けいとう」は秋に咲く花です。

 ビロードのような手触りの花が、ニワトリのトサカに似ているので、この名がつきました。花汁を「うつし染め」(布の上に型紙をおき、花汁と染料を混ぜた「色糊」を用いて文様を染める方法)に使ったので「韓藍からあい」(くすんだ濃いめのピンク)とも呼びます。

 赤や紫の色が派手派手しくて趣味ではないのですが、俳句初心者として兼題の好き嫌いは言えません。ああ、つらかった。(言ってるし)




 鶏頭の森見上げて過ぐる○○○○○


 問題① 上の俳句は季重なりでボツになりました。

 さて、わたしが○○○○○に入れた季語はなんでしょう?

 解答は最後に!




 砂ぼこり枯れた鶏頭五六本


 鶏頭というとカラカラに乾燥したイメージしかないので、「ええい、こんなもの、こうしてやるっ!」と頭の中で捨ててしまいました。俳句はときに非情にもなるのです。うそです。ボツです。




 ☆☆ 鶏頭や父の匂いの古帽子


 鶏頭は、父の愛用していたコーデュロイの帽子にも手触りが似ていました。父のベージュの帽子は、秋の衣替えをしていたらタンスの隅からひょっこり出て来て、母と懐かしみました。人入選でした。





クイズの答え「蟻の道」←夏の季語


 今回、文字数の少なさに「この人、ほんとに鶏頭が嫌いなんだな」と図星をさされそうなので、もう少し書きます。


 鶏頭は嫌いな人が少なくありません。例えば。


 火に投げし鶏頭根ごと立ち上がる  大木あまり


 燃やしちゃうの? そこまでする? そしたら立ち上がったって、ゾンビか。ここまでいくと恐怖の句ですね。


 仏恩のおよばぬところ鶏頭花   鷹羽狩行


 ほらね。お釈迦様にも見放されてるのよ、この花は。


 抜き棄てて鶏頭のああ茎も赤し   安住敦


 抜き捨てちゃう! そしたら茎まで赤かった! なんの呪いだ、これは。

                   つづく

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