二十一年 二月 「野焼」

 「野焼」は春の季語です。土地を肥やし、害虫を駆除するために野や土手などの枯れ草を焼き払うこと。この火を「野火」といいます。(俳句歳時記・春、角川書店 より引用)傍題に野焼く、堤焼く、野火、草焼く、芝焼く、芝焼、があります。熊本県の阿蘇の野焼が有名ですが、現在は限られた一部地域以外は全国的に禁止されています。見たことのないものを詠むのって難しい。動画を検索したりしました。




 野を焼かれ家をなくしたねずみの子


 わたしは基本的に人類が嫌いです。例え大切な農事であっても勇壮な火祭りであっても、野に生き野に暮らす生き物はどうしたらいいの。散々に他の生き物に迷惑を掛けながら豊かに暮らしている人類の一匹として申し訳ない気持ちです。この句がボツになったのは、映像として具体的なものが「ねずみの子」しかないからだと思います。




 阿蘇野焼き人の姿の小さきかな


 阿蘇は古代の大噴火によってできた巨大カルデラです。南北25km、東西18km。その広大な野を焼き払うのですから、携わる人が頼りないほど小さく見えます。

牛や馬の為の豊かな牧草地が森林に変わらぬように、毎年野焼きをして大草原を維持するのだそうです。この句がボツになったのはリアルな炎、すなわち野焼きそのものを詠んでいないからかと思われます。




 ☆☆ 野火赤く走れ黒煙龍を呼べ


 野焼きは危険な仕事です。常に風を読み、火の行方を監視しなければなりません。それでも一気に燃え上がる野火の速さや立ちこめる黒煙の凄まじさは、野焼きに従事する男達をして「火祭り」と呼ばれるほどに興奮させるものなのだろうと想像して詠みました。ただ♪変われ獅子丸、ライオン丸に~♪と続きそうなのが難点。人入選。

                             つづく

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