十九年 十月 「時雨」

 エッセイのタイトル、変えました。

 もともと「俳句スイッチ」で行こうと思っていたので、後悔はないのです。


 はじめから真面目に書きすぎて、いま頭が痛いです。

 もう少し笑えて楽しめるエッセイにしたいです。


 もう四十年来の旧友がいるのですが、笑いのツボが半音ズレていて、そいつを笑わせようと思って、会う度に失敗談を盛って話していたら、全然笑わずに「気をつけなよ」とか怒られる始末で。あげくに「○○ちゃんって、いつも失敗してるよね」と真顔で言われ。確かに失敗談には事欠かないけれど、あれは確かにネタだったんだと、いつか伝えられる日が来るのだろうか。


 

 さて時雨しぐれは冬の初めに降ったかと思うとすぐに遠離る通り雨のことです。(拙作「時雨の鏡」の主人公の名前なので肩に要らない力が入ります)その定めなさ、はかなさが本意とされています。(俳句歳時記・冬より引用)




 初時雨濡れて艶めく石畳


 河原や砂浜に行くと濡れて宝石のように艶めく小石に魅せられます。それと同じように石畳も濡れると美しく趣を変えます。そんな初冬の気づきを詠みましたが、はかなくもなんともなかったかな。



 時雨来て影絵となれり松林


 抽選で当たって日本三景の天橋立に行ったことがあります。海の中を一筋の砂地の路が松並木に守られながら対岸まで長く続いているのです。歩いて渡ると左右が広々とした海で、少しづつ近づいてくる対岸に辿りつくのが惜しいような、もっと海風を浴びて歩き続けたいような不思議な気分になります。途中で雨に、まさしく時雨に降られたのですが、遠くからこちらを見たら日本画の墨絵のように見えるだろうなと思いました。だから「時雨来て墨絵となれり松並木」とした方が良かったんじゃないのか。(゚◇゚)ガーン



 ☆☆ 小夜時雨さよしぐれ初めて触れし君のひじ


 小夜とは夜の美称です。仕事が終わって職場から帰ろうとしたら雨が降ってきて、密かに思いを寄せる人が傘が無いというので、駅まで相合い傘で帰ったという句です。体の大きいその人が女物の傘を差し、その肘(肘が漢字で無く平仮名なのは、やわらかな印象にしたかったので)にそっとつかまるようにして歩いた十分足らずの時間が嬉しくて心ときめいたという句が「人」に入選しました。


 季語と傍題の件ですが、もう少し詳しく説明します。例えば「登山」は夏の季語です。(春だって秋だって登るだろうというような話は措いておいて)傍題としては、山登り、登山道、登山口、登山小屋、登山宿、登山杖、登山帽、登山靴、登山電車、登山馬、ケルン、があります。しかし、キャンプ、テント、バンガロー、バーベキューは登山の傍題ではありません。こちらは「キャンプ」の傍題です。そんなもん覚えきれないから、俳句を詠むときは歳時記で必ず調べないといけないわけです。


                                 

                               つづく

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