二十年 八月 「小鳥」
どの入門書にも書いてありますが、俳句には定型というものがあります。
一番分かりやすいのは上五(最初の五文字)に季語をおいて、残りの十二文字で季語とは無関係な情景を描写する「取り合わせ」の句です。
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上五の「や」は切れ字です。中七+下五の内容は、上五の季語に近すぎても遠すぎてもいけなくて、この絶妙な距離感が難しくて毎回失敗するのですが、今回は上手くいった、と、思いたい。
読みさしの文庫に栞小鳥来る
「小鳥来る」は「小鳥」の傍題で秋の季語です。渡り鳥もそうですが、秋になると山から平地へ下りてくる鳥たちが季節を教えてくれます。するとその愛らしい姿を映そうと望遠レンズを背負った鳥好きさんたちも野山に出没します。
職場の昼休み、近所の公園のベンチで本を読んでいると、頭の上から小鳥の鳴き声が聞こえます。急いで本に栞を挟んで梢を見上げると、一年ぶりの愛らしい小鳥たちが鳴き交わしているのでした。季語は下五に置きました。
☆☆ 小鳥来る青空ひとつ高くなる
夏の間は聞かれなかった小鳥たちの声が、秋の深まりを教えてくれます。懐かしいような思いで空を見上げると、澄んだ空は昨日よりほんの少し高くなったように見えるのです。季語の「小鳥来る」を上五に置いて中七下五で情景を詠んだ取り合わせの句。下五は名詞ではありませんが「人」入選でした。
☆☆ 朝の珈琲君は猫舌小鳥来る
秋も深まれば早朝から小鳥たちの声が聞こえます。この季節、朝の珈琲がいっそう美味しくなります。でも君は猫舌なんだよね。フルポン村上さんかさだまさしさんに影響受けたかのような句。この句は上五、中七がひとかたまりで、下五に季語を置いた取り合わせの句です。「人」入選しました。今月は二句が人入選でした。
(追記)
<中七+下五>は上五の季語とは無関係とはいっても、同じ季節を感じる内容を詠みます。「小鳥来る プールサイドの熱中症」では句にならないわけです。
つづく
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