30話:彩那の義理の姉

 突然現れた女子高生にあわてる私たち。


「ご、ごめんお姉ちゃん。すぐに追い出した方がいいかな? まじで――」

「別にいいよ。いやー、それにしても友達できてんじゃん! 身長もそうだけど、見違えるほどに成長してるじゃん!」

「そうかな……、それなら良かった。ここに来て、本当に良かったと思う」


 なんた、彩那の義姉あねか。赤い紐を結ぶのは今も昔も変わらないんだ。

 彩那の義姉、希も片付けを手伝った。10分経つ頃には、本棚は元通りになっていた。


「ありがとね、みんな。これ、この前大阪行った時のお土産、あげるよ」

「えっと……、お好み焼き味のポテチですか? ありがとうございます」

「あまり嬉しそうじゃないな。綾ちゃん、たまにははっちゃけなよ。そうじゃないと人生無駄だよ!」


 希さんははげましてくれる、だけど……、それを許さないのが私だ。


「そーなんですか……。ですけれども、かつて一回だけ怒りをあらわにして、人を怪我けがさせたことがあってからけてる。本当は喜びたいんです、けれどすると……」

「九尾って、あわれだね。望みもしない能力で人を傷つけるなんて……」


 一瞬いっしゅん、佳奈は私の方を向いた。こいつも『あの件』は知ってるもんね。ついでに私たちは家を出た。

 青空なのは変わらない。


「『あの件』はすごかったね。


 あれは……、


 ……、


 本当に……、


 すざましかった。正直、あれをおさえられた信濃路がすごいや」

「たしかにね」


 佳奈は物を忘れたように、間を開けて言った。気付けば、虹色になるように設計された、住宅街を抜けていた。ということは、私たちの家からも近い。

 白い屋根の、玄関前に鉄道模型の入っていた箱が積まれている家があった。そこが佳奈の家だ。


「じゃーねー、佳奈ちゃん。元気で〜」

「またねー、綾ちゃんも〜」

「じゃあねー」


 久しぶりに私は明るい声で言った。そして私たちも家に着いた。


「ただいまー」


 親はちょうど出かけていた。ので、私たちは勝手に焼きそばを作って食べた。

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