12話:先輩と遊園地を出る

 コンサートが終わった後、私たちは先輩方のいる、少し開けた場所へと向かった。部活について事前に知ることも必要だと思ったからだ。


「君たちは……、今年の新入生かいな?」


 さっき指揮台に上がった先輩が応答してくれた。ここで見ると、少し背が低く見える。


「そうです! 演奏すごかったです!」

「そうか、で、君は確か……、佳織先輩の妹さんだよね? 私は羽屋はねや奈乃なの、二年で部長をやっているんだー」

「どうして部長は三年の先輩方ではないのですか?」

「うーん……、色々あった。現に今日もそんな来てないし」

「上下関係はありますか?」

「杞憂だね、そもそも吹奏楽が本業じゃないし。んで、今質問してくれた君の名前はなに? ちなみに私の名前は龍起谷梨名、ただのネット民ね」


 これまたキャラの濃い先輩がやってきた。下ろした髪からは想像できない中身、自らネット民なんて言えないよ。


「信濃路ひとみです」

うわさでは聞いたことあるよ、たしか言葉を自在に操る魔術師とかなんとか。不思議な能力だね」

「物を奪い、使う能力です。でもなんか精神的には、言葉で追い詰められます」


「でも、私の能力には及ばなそうだ。私の能力は、弾丸を創生し、ナイフを創生し、時を操る能力だよ、どう、強いっしょ?」

「弱いわけないです」

「正直でいいねぇ、そういうの嫌いじゃないよ」


 あの信濃路を手のひらで転がしたあたり、あらゆるステータスが高い。多分橋武で五本の指に入る強さなのではないか?


「まあ、なんなら一緒に遊園地を出てみる? そして私の家で資料請求してみない?」

「嫌な予感しかしません……、本当は厳しい部活なんですよね?」

「信濃ちゃん、本当にそんなわけないよ。多分橋武中学校で一二を争うゆるい部活だよ、これはマジで!」

「そうなんですか……、信じますよ」


 梨名さんは私を含む、信濃路以外のの人に聞いた。当然答えは『はい!』だった。

 私たちも吹部のバスに乗り、梨名さんの家へと行った。


 川沿いの古く広い家だったが、案外、私たちの家と近かった。

 家に着くと、中のリビングまで招待された。青い壁が目立つ広いところだった。

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