13話(一章終点):吹奏楽部の紹介

「座って、どうぞ。ほら、遠慮しないで! 立って話すと大変でしょう?」

「あ、ありがとうございます」


 ブルーのソファに、私たちは座った。先輩方の多数は、私達を見届けて帰った。残ったのは羽屋さんと、梨名さんと、知らない先輩一人だった。


「んじゃあ、揃ったよね? この後は部長である羽屋が担当いたします」

「急にかしこまった言い方になりましたね」

「信濃路ちゃん、しゃーねーじゃん。勧誘だよ? 真面目にしなければ客は来ないんだよ」

「そーなんですかー」


 信濃路の丸そうで鋭い言葉も、羽屋さんには刺さらない。あの人はあらゆる面で、見た目以上に大人びている。


「じゃあ再開します。今、表向きの吹奏楽部では全国大会に出場するほどの強豪ですが、裏向きには都市伝説の研究をしています!」

「そうなんですか! 私、すごい都市伝説好きなので良かったです! でも、肝心の吹奏楽はどうするんですか?」

「大丈夫、信濃路ちゃんのために、彩那ちゃん説明してほしいなぁ」


 羽屋さんは彩那に話を振った。元部長の妹ならば、わかるだろうという判断だと思われる。


「はい、羽屋さんわかりました! 実は、真面目にするのは、大会前の一ヶ月だけなんだ。しかも効率的に、厳しくない練習で、勝ててるんだ。すごいところでしょ、橋中吹部って!」

「彩那ちゃんの言う通りだよ、これで厳しくないってーことが証明されたねん! んじゃ、体験入部で待ってるね〜」


 羽屋さんと梨名さんが、私たちを玄関まで導いてくれた。


 私たちの青春は確約された。さて……、ここからどう春休みを過ごそうかな?

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