18話:吉風川からの叫び声

「佳奈ちゃん、こんな感じでいいかな?」

「綾ちゃん、ありがとね。実はねこの子が人形にされる前、私と鉄道巡りの旅に出たことがあるんだ。もちろんここじゃなくて大阪。あそこは良かったよ、私鉄がびゅんびゅん走ってて。また行きたいなぁ」


 その願いを叶えるために、多分私たちは数多あまたの人に会わなきゃいけないだろう。私たちの能力だと解決出来ないからね。


 まだ雨は降っている。しばらくは止む気配がない。


 窓の外を見てなげいていると、突然、信濃路が私たちに話しかけてきた。


「綾ちゃんに佳奈ちゃん、なんか今、吉風川の方から叫び声しなかった?」

「したっけ……、まあ行ってみる?」

「綾ちゃん、君の狐耳でも聞こえなかったんだ。私の幻聴なのかな?」


 私でも聞こえなかったのは事実だけど、叫び声がしたかどうかの是非ぜひは私たちは知らない。だからこそ吉風川に向かう。


「夕日ちゃんは行くの?」

「信濃ちゃん、当然行くよ。気になるもん、叫び声がする方向って、なんか行きたいんだよね」

「彩那ちゃんは?」

「うーん……、怖いの苦手なんだよね。でもみんなが守ってくれそうだし、今回は行くよ」


 今いる人で、吉風川へと向かうことにした。


「じゃあ、徒歩だね。家にある傘を貸すから、みんな協力してくれない?」

「はい! 吉風川の謎を解き明かしましょう!」


 佳奈ちゃんの威勢のいい掛け声で、私たちは吉風川へ歩き始めた。


 雨はかなり降っているが、歩みを止めるほどではなかった。虹色の屋根の住宅街を通り抜け、私たちは吉風川の河原についた。


 そこには、父と見られるヤンキーらしい人と、あざがある娘と見られる少女がいた。

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