　その怪しい波は、少女だけを巻き込んだ。

　父親はすぐに河川敷から上がり、街の方へと逃げって行った。

「あっ……っ！」

　佳奈の言葉を失うような叫び声が、私たちの心にどうしても残ってしまう。父親は逃げ、娘は死んだ。最悪な終わり方だ。

「みんな、これからだよ」

　早苗は今後を知っているかのように、みんなに向かって言った。

　いまだに雨は降り続ける。この波は少女をさらった後、どこかに消えた。濁（にご）ったまま、吉風川は流れる。

「早苗ちゃん、ここからどうなると言うのさ！　もう少女は川底に沈（しず）んでしまったのさ！　だけど良さはかったよ、初めて都市伝説を、この目で見れたんだもん！」

「信濃ちゃん……、そういうところだと思うよ。君は少し現実を見た方がいいよ。人が死んでいるんだよ、そんなに興奮（こうふん）するなや」

　信濃路は生まれて初めて、都市伝説を生で見て興奮していた。それを隣（となり）で見ていた佳奈。彼女は信濃路な様子を見て、呆（あき）れるように言った。

「たしかにな……、ガマンガマン」

「良かった……、信濃ちゃんが思い留めてくれて。またキレたら、大変なことになっていたよ……」

「あの時はごめんな。でも今回は状況が違うよ。川沿いだから、電気を放つと魚が痺（しび）れて死んじゃうよ」

　良かった、理性で留めてくれた。遊園地の二の舞にならないで済んだ。

　けれど、早苗の言う『これから』がわからない。舵名か誰かは知らないけど、生き返させることが出来るのか？

　泡が川の中からいきなり出てきた。そして、舵名と化け猫が川底から上がってきた。

「やっぱりな。ほら、私の言う通りでしょ！」

　早苗は得意げに言った。みんなは少し笑ってるものの、私は内心驚いていた。舵名と早苗はどういう関係なのか？　それが気になってしょうがない。

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