28話:サクラ会う、メマイする

 ボブショートの青縁あおふちのメガネの少女が、平塚に話しかけてきた。


「ミサキ、仲良しの友達できた?」

「うん、もちろん。こいつらが新しい友達さ! サクラちゃんも一緒に来る?」

「そうしようかな……、でも、今日は父親の後援会の方々と話さなきゃいけないんだ……。ごめんね。また今度!」


 後援会……、聞いた感じ、サクラという子も凄いのかもしれない。


「で、今の子は誰なの? 君の友達なのかい? 後援会とかマジぱねぇんだけど……。いや、マジでどんな人なん?」


 早苗は平塚に、興味津々に聞いた。


「うん、成田サクラ。父親は貭河原市議会議員の成田なりた宗吾しゅうごさ」

「え……、しゅ、しゅ……うご? いや、なんでもない」


 早苗は何か嫌なことを思い出したかのように、桜の木の下で立ち止まってしまった。めまいがしたかのように、下を向いたまま動かない。


「嫌なことでもあったの? 私になら話してもいいよね?」


 信濃路は早苗に話させて、楽にしようと思っているのだろう。だけどその親切心は、早苗に届かなかった。早苗は依然いぜん木の下でめまいをしながら


「別に、いずれ分かることだから、今じゃなくても良くない? そんなことよりめまいがするんだ。助けてくれない?」

「話せば治る」

本当ほんとにそうかな? 時期尚早じきしょうそうだと思うけど、違うかな?」

「それほどのことなのか……。私たちは閉口した方がいいかもな」


 早苗は信濃路の追求を逃れホッとしたのか、背中を伸ばして歩き始めた。最初は佳奈と信濃路に支えられて歩いていたが、桜の木の並木が途切とぎれたころには自力で歩いていた。


 途中で平塚と別れ、虹色に並べられている屋根の住宅街を抜けた。そして、黄色い屋根の信濃路の家の前に着いた。


「みんな、今日はありがとね。早苗、それにみんな、何があってもこれからもずっと友達な!」

「信濃、私は何があっても君達と友達だからね! この約束は何があっても、守るから、これからもよろしくね!」


 信濃路は黄色い屋根の家に帰った。でも私たちは歩く。まだ家に着いていないからだ。

 唐突に早苗が呟いた一言に、私たちは耳を疑った。

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