7話:インフィニット・ファランクス

 さっきの疲れを取ったあと、私たちは自然をテーマとしたエリア『ネイチャーランド』へと行くことにした。


「緑が広がっていて、池もあるね。小鳥のさえずりも聞こえるこんな静かなエリアが、うるさい遊園地にあるなんて意外だなぁ」

「綾ちゃん、ここは人気ないし、なによりも異能力バトル場があるじゃん! 誰かやらないか?」

「信濃ちゃん、勝負を挑むよ! そして、存在感を返してもらうよ!」

「ふーん、いいよ。来いよ!」

「お金は負けた人が払う、これでいいね?」

「いいよ、だって負けるはずないもん!」


 お互いに負けないと思っている二人、これならばいい勝負になりそうだ!

 舞台となるのは森を模したバトル会場、柵があって、そこで魔法が跳ね返る仕組みになっている。頭脳戦になるかもしれないね。


 お互いに戦場へと足を踏み入れる。


「勝負の時だね、佳奈ちゃん、覚悟は出来ているかい?」

「……、そちらこそ。信濃ちゃん、私に殺される覚悟は出来ているのか?」

「殺したら人間的に負けだな」

「ならば精神的に殺すのみ! 行くよ、『インフィニット・ファランクス』!」


 佳奈は人形を創生し、操ることができる。創生された人形は一時間経つと消える。だから奥の手の人形は買っている。

 ところで、『インフィニット・ファランクス』は多数の槍を持った、鮮やかな色彩の服の人形を創生し、一気に攻める技である。


 質より量、それが佳奈の基本的な行動パターンである。人形を創生するだけなら魔力をそんな使わないらしいし。


「……くっ……。でも、ちょろいな……、ちょろいんだよぉ!」

「それしか言えないのか? 私の色彩豊かな服の人形にやられたのか、いつも難解な言葉で攻めるくせにさー」

「うるさいですなぁ、少しは口をふさげ!」


 図星をつかれた際、激昂げきこうしやすいのが信濃路の欠点である。一回怒りのあまり机を壊して、親を呼び出された。

 ……、あー、ダメだこれは。信濃路は手に、青き電気を溜めてやがる。もしかしたら、『アレ』をしてしまうかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る