22話:虹の下の願望

「彩那ちゃん、できればこのメンバーで一緒のクラスになりたいな」


 信濃路は願望をつぶやいた。他の人も信濃路に続いてうなずいた。


「私も信濃ちゃんと同じく。でも……、中学校には仲良しということはバレてるよね? なれて一人か二人じゃない?」

「佳奈ちゃん、そんなことを考えないのがいいよ。私も薄々気づいているけど、言ってしまったら夢がないやん」

「そ、そうか信濃ちゃん。私は余計な期待をしない方がいいと思ってるからそう言ったんだ」


 佳奈と信濃路は親友だけど、性格と主義は合わない。だけども普通に話し、たまにケンカする。人の出会いって、何があるか本当にわからないね。


 でも、いや、だからこそ私たちは友達になり、互いの趣味を語り合うんだ。

 なんだかんだ言って読書好きの信濃路も、鉄道模型が好きな佳奈も、互いに互いの趣味を理解しているしね。


「ねえ、新しい友達もできるかなぁ? 南橋武小学校とか、戸倉新町小学校とかの人とも仲良くなりたい」

「綾ちゃん、きっとなれるよ。でも……、私たちも忘れないでね!」

「彩那ちゃん、絶対に忘れないって。安心して、私たちは永遠に友達でしょ!」


「綾ちゃん、それをズッ友って言うんだよね」

「信濃ちゃん、いい言葉を教えてくれてありがとうございます」

「あー、今綾ちゃんが初めて私を『信濃ちゃん』と呼んでくれたー、ありがとね!」


 信濃路が言うまで、私も気付いていなかった。でも、なんだか『信濃ちゃん』と呼んだ方がいい気持ちだ。


「そんじゃあ、今日はここまで、解散!」


 早苗の一言で、私たちは河川敷から帰宅することにした。川は濁っている、だが、そろそろその濁りも消えそうだ。


「はぁ、はぁ……、綾ちゃんさー、舵名を見なかった? 気付いたらいなくなって……」


 赤い唐傘の付喪神が、下流の方からやってきた。少し焦っているように見える。

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