16話:不思議な別れ

 舵名のなんとも言えぬ返事の後に、彩那はやって来た。


「綾ちゃん、どんな状況なの?」

「彩那ちゃん、私たちはこの傘の持ち主を待っているんだよ」

「綾ちゃんさー、私たち……って、この小学生みたいなやつは誰なのかい?」

「お前だけには言われたくない。初対面だけどそう思う」

「彩那も彩那だけどさー、舵名も尖らないでー」


 私は困る。今、この路地裏にいるのが私と彩那と舵名。その内二人がケンカしたら、私一人が孤立してしまう。


 しかし、私には手が負えなかった。裏路地に入ってきた、私と同年代くらいの少女の一声で解決した。


「まあまあ、舵名ちゃん、落ち着きなさって」

「誰だお前……って……、思ったら、柄依名えいなちゃん! この傘、忘れてないかい?」


「あ、あった……。もう諦めていたけど……、あって良かったーーー!」


 舵名の言う通りの持ち主だった。だけど、いやだからこそ聞きたいことがあった。


「付喪神なのに、傘がなくても平気なんだね」

「そこの狐耳の子、平気じゃないよ。だって今、本調子じゃないもん!」

「そうなんだ、平気って言ってごめんね。でも、本調子ってどんな感じなの?」

「頭がかなり良くなる、そんな感じかな?」

「そうなんですか、ありがとね。じゃーねー」


 私の発言を最後に、一旦解散することにした。お互いに、お互いの行き先がある。私たちも信濃路の家へと向かう。


「また会えるといいね」

「うん。でも、数十分後にまた会うかもね」


 彩那の残した言葉に、柄依名(多分唐傘の付喪神だと思う)は不思議なことを言い残して行った。

 私はまたチャリを漕ぎ、彩那は自分の足で走る。信濃路の家にはあと少しで着く。

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