3話:8:41

あやちゃん、なんかみんな動いてるね」

逆音さかねちゃん、待ってれば見つかるんじゃない? だって残りのメンバーって、あまり周りを気にしないでしょ?」

「たしかに、じゃあ待とうか」


 私の予想通り、すぐに一人来た。


「やっほーい!」


 彩那あやな(苗字は小田原おだわら)だ。背が低く、むしろ目立つ。後ろで髪の毛を結んでいる。

 トラディショナルで、カラフルで、派手な服だ。多分たぶんあの民族みんぞくふう服屋、ヨーテットーンで買ったんだろう。ここには服のセンスがある人がいない。


「彩那ちゃん、どこにいたの?」

「綾ちゃん、あの植え込みら辺」

「ごめん、気付かなかった」

「植え込みの中にいた」


 そしたら気付かないね。普通だったらそこにいないよね? まあ、彩那の背の低さと好奇心ならするかもしれないけれど。


「後一人はどうする? 来なさそうだけど」

「彩那ちゃん、猫ねこの真似まねでもしてる? あいつの好物だし」


「うにゃうにゃー」

「にゃーうにゃーう」

「にゃにゃにゃー」

「うーにゃー」

「にゃーん」

「にゃにゃーん!」


 何故かは知らないけど、猫の鳴き真似をすると信濃路が来る。その時に信濃路しなのじ(名前はひとみ・信濃しなのと略されやすい)は「にゃにゃーん!」と言うことになっている。

 八重歯やえばで、ポニテで、上下ともに灰色のスウェット。これで全員、そろったね。服装はダサいし、キャラも濃いけど、楽しい人たちが!


「誰がなんと言ったかはわかる?」

「佳奈ちゃん、当然わかるよ。『うにゃうにゃー』が逆音ちゃん、『にゃーうにゃーう』が佳奈ちゃん、『にゃにゃにゃー』が綾ちゃん、『にゃーん』が早苗ちゃん、『うーにゃー』が彩那ちゃん。合ってた? じゃあ焼肉おごってよ」

「信濃ちゃん? おごらないけどすごいね。でも、これからが本番だね!」

「たしかに、佳奈の言うことも一理あるね。じゃあ、レッツハブアナイスタイム!」


 信濃路の掛け声で、私たちはゲート前に行く。周りに比べて地味で浮いていたので、親に連れられた子供にジロジロ見られた。


「8時41分ですが、混雑のため、開園いたします。ゆっくりとお進みください」

「でも、みんな走ってるな、私たちも走ろうか?」

「早苗ちゃん、さーんせいー!」


 早苗の意見に、佳奈が便乗した。私含め、他の人も反対意見が出なかったので、走ることになった。

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