2話:夢の国へ

「バス来たよ!」

「ありがとう、教えてくれて。ぼけっとしていて気付かなかったよ」

「こちらこそっ!」


 バスに乗った。商店街を過ぎ、住宅街を過ぎた。そして林を過ぎ、遊園地に着いた。

 七色に光る、遊園地。そのキャラクターのボードが貼ってある入場口の前にやって来た。


「来たねー遊園地、まずは、同行する人を探さなきゃね」

「たしか、信濃路さんに、彩那ちゃんに、佳奈ちゃんだっけ?」

「あと、早苗ちゃんな。でも、誘ったはいいけど変わり者しかいないなー」

「仕方ないじゃん。もともとはぐれ者のグループだったじゃん」


「あのさぁ……、その言い方なくね?」

早苗さなえちゃん! どうしてここに?」

「綾ちゃん、とぼけるなって、待ってたんだよ〜」


 サイドテールで、少し背の低い早苗(苗字は湧石わくいし)がやってきた。青いチェック柄で、ボタン式のTシャツに、Gパンを履いてきている、見た目通りのオタクだ。


「早苗ちゃん、でさー、ライン見た〜?」

「逆音、うん、見るんでしょ。吹奏楽部に入るかどうか悩むんだよねー」

「入ろうよー、みんなでやれば絶対に楽しいって!」

「そうだね、じゃあ入ろう」

「早苗ちゃん、せっかちだね。他の同行者はどうするの?」

「あ、忘れてた」


 人混みの中で、あの人たちを探さなければいけない。某リーを探せかよ。という冗談は置いて、本当に見つけづらい。変な耳みたいな被り物をしてる人がいる、人間なのにね。私だって好きでしてるわけじゃないのに。


「ねえ、私を忘れてほしくないなぁ」

佳奈かなちゃん、いたんだー」

「逆音、いたよ、早苗の後ろに」

「怖いわ! 童顔、ポニテ、さらには『尾久』と書かれた黒いTシャツという勝ち属性のくせに存在感薄くない?」

「信濃は私の存在感という、大変なものを盗んで行きました」


 たしかに、佳奈(苗字は灘村なたむら)と信濃路のコンビって、信濃路が目立ってるからなー。佳奈は佳奈で、鉄道(模型)オタクという属性があるのになー。

 でも、裏を返せばキャラが濃い人しか残ってないから、探しやすいね!


「開園は、九時からです。慌てないでください」


 場内アナウンスが響く。でも、人々は入場口へと流れ込む。みんな焦ってるからなー。

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